同じ「50代で診断士合格」という結果でも、その背景や活かし方は人それぞれ。
この記事では、主婦、公務員OB、再就職希望の元会社員という3人の合格者にインタビューし、多様な合格ストーリーを比較しながら紹介します。
「診断士の資格で何ができるのか?」を、具体的にイメージしたい方に最適です。
主婦 × 診断士「空白期間を武器に」
「資格を取るなんて、ブランクがある私には無理だと思っていました」。
そう語るのは、50代半ばで中小企業診断士試験に合格したAさん。
子育てを終えたばかりの専業主婦でした。
Aさんが診断士を目指したきっかけは、子育てが一段落し「これから先、自分の人生に何か軸が欲しい」と思ったこと。
家計や家族の経営的な視点にも関心があったAさんは、ある日偶然見かけた『中小企業診断士=経営の国家資格』という文字に惹かれ、興味を持ち始めます。
とはいえ、ブランクの長さやビジネス知識ゼロの状態からの挑戦には不安も大きかったといいます。
「最初は“スモールステップ”で始めました。
YouTubeや無料講座でざっくり内容を知り、少しずつ“やれそう”を積み重ねていったんです」。
勉強の中心は通信講座とスキマ時間の積み上げ。
家事や買い物の合間、朝晩の静かな時間など、時間を“線”ではなく“点”で使いながら学習を継続。
最初の模試では手も足も出なかったというAさんですが、「過去問で“出るパターン”に絞って対策したことが転機になった」と振り返ります。
印象的だったのは、Aさんが「主婦としての経験は、診断士にとって“空白”ではなく“資源”だった」と語ったこと。
家計管理、家族間の調整力、地域コミュニティとの関わり──それらが、二次試験の事例問題において“リアルな目線”として活かされたのだといいます。
合格後は、地元商店街の活性化プロジェクトに関わる機会を得て、徐々にコンサル実績も積み上げ中。現在では、自身の学びを活かして「女性の学び直し」をテーマにしたセミナー講師としても活動しています。
「遠回りも悪くない。人生経験が資格に変わると気づけたことが、一番の収穫です」。
そう語るAさんの表情には、自信とやさしさがにじんでいました。
元公務員 × 診断士「セカンドキャリアの再設計」
定年退職を2年後に控えたBさん(当時58歳)は、長年勤め上げた地方自治体の職を離れたあと、何をするかを真剣に考えていました。
「再雇用制度もあったのですが、正直なところ“やりがい”が見えなかったんです」。
そこでBさんが選んだのが、中小企業診断士という道でした。
もともと地域振興や中小企業支援の業務にも関わっていた経験があり、「自分のキャリアを生かせる資格」として診断士が浮上。
行政から民間への“橋渡し”としての役割が果たせる点に、大きな意義を感じたと語ります。
とはいえ、実際の勉強は決して平坦ではありませんでした。
「退職後にゆっくり…と思っていたら間に合わない。そう思って在職中から準備を始めました」。
仕事の合間を縫って通信講座でインプット、休日には図書館で過去問演習という日々。
自治体勤務ならではの“調査・報告書”に慣れていた経験が、二次試験の論述に活きたといいます。
「公務員の仕事は“広く浅く”になりがちでしたが、診断士の勉強を通して“深く考える力”を取り戻した気がします」。
Bさんにとっての学び直しは、単なる資格取得ではなく“思考力のリハビリ”でもあったようです。
合格後は、地元商工会議所の外部相談員として週に2回活動しながら、地域創生系のNPOにも関わっています。
行政経験と診断士資格を両立させたことで、「第三者だからこそ話せる・聞ける」立場が確立されたのだとか。
「診断士は、単に企業を診る資格ではなく、自分の経験を“再編集”して伝えるツールだと思う」。
公務員としての蓄積に、“経営の視点”という新たなレイヤーが加わったBさんの言葉には、確かな説得力がありました。
元会社員 × 診断士「再雇用ではない道を」
Cさんは、大手メーカーに勤めていた元営業職。
58歳で役職定年を迎えた頃、会社から再雇用制度の案内がありましたが、「このまま同じ会社にぶら下がるのは違う」と感じ、中小企業診断士の勉強を始めました。
「定年後も働くつもりなら、何か“名刺になる武器”が欲しかった」。
再雇用ではポストも給料も大幅ダウン。しかも仕事内容に裁量はなく、働く意義を見出せなかったといいます。
営業時代に得た“ヒアリング力”や“提案スキル”は強みになると考えたCさん。
診断士試験の存在は知っていたものの、経営理論や財務会計には触れたことがなく、最初は「まるで異国の言葉」のようだったとか。
そこでCさんは、完全独学ではなく、短期集中の通信講座を選択。
「60歳の手前で時間が惜しかった。お金よりも時間のほうが貴重」と考え、効率を重視した学習スタイルを徹底。
朝5時起きで1時間の勉強を習慣化し、仕事後の1時間とあわせて“平日2時間、土日は4時間”を死守したといいます。
一次試験はギリギリ合格。二次試験では1度つまずいたものの、翌年の再チャレンジで見事合格。
「自分に残された時間を考えたとき、“後悔しない選択”をしたかった」と振り返ります。
合格後は、企業OB人材バンクを活用して中小企業の経営支援に携わるほか、自身の営業経験を生かして“売れる仕組みづくり”のセミナー講師としても活動。
「自分のキャリアは、会社のものじゃなくて、自分自身のものだった」。
そう気づけたことが、最大の成果だったと語ります。
3人に共通する学び直しの心得とは?
異なる立場から診断士を目指し、それぞれの道を歩み始めた3人。
主婦、公務員、会社員と背景はバラバラでも、話を通じて見えてきたのは「50代だからこそ意味のある学び直し」でした。
共通していたのは、次の3つの姿勢です。
1つ目は、「完璧を目指さないこと」。
3人とも“最初から完璧にやろう”とはしていませんでした。自分のペースで小さく始めることが、続けるコツだったといいます。
2つ目は、「過去の経験を活かす視点」。
診断士試験の学習や実務の中で、自分の過去の仕事や家庭での経験が“強み”として発見される場面が多くありました。
“新しいこと”を学ぶというより、“今までの人生を経営視点で再編集する”──そんな意識が大切なのかもしれません。
3つ目は、「環境に頼りすぎず、孤立しすぎないこと」。
講座やSNSを活用しながらも、自分で考え、自分で決める。
自立しつつも、必要なときには人とつながる柔軟性が、合格後のキャリアにも生きていました。
今、診断士を目指すか迷っている方へ。
3人のように「始める理由は人それぞれ」で構わないのです。大切なのは、“始めた後に何を見つけるか”。
年齢に縛られない新たな可能性を、あなたもぜひ掴みに行ってみてください。
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